これは17年7月に公開したものですが、本質的な部分に変化はないため再度掲載します。文中の指標は当時のものです。



アメリカが風邪をひくと、風邪はインフルエンザに化けて、またたく間に世界に感染してしまいます。従って、マクロ経済を見るときはアメリカ経済を中心に見ています。15年にはチャイナショックもありましたが結局のところ下げは限定的でした。市場は程よい均衡点を見つけ、15年末には2万円台を回復するに至りました。

そう考えると、やはり米国景気の動向が今後のグローバルな金融マーケットを占う上で重要だと思います。過去を振り返ってもITバブル崩壊、リーマンショックなど指数の下落幅が50%以上を超える”暴落”と呼んでいい下げは、ほぼ全てアメリカ発でした。

中国が米国のGDPを追い抜くまではアメリカファーストで市場を観察し、”米国発以外の危機は、基本的に買い”のスタイルでいいかと思っています。(中国の経済統計は参考にならないと言われますが、仮に下駄の履かせ方が一定であるならば、統計のトレンドを観察すると趨勢がつかめるかもしれません)

さて、米国についてさらに言うと、全ての指標が警戒域を示しているように思います。

現在の景気サイクルは120か月近い拡大フェーズの最中であり、過去最高期間を更新する勢いです。

株式市場に目を移すと、SP500のPERは18.9倍、益回りは5.2%。10年債の利回りが2.3%ですから、株式と債券を比較したときのスプレッドは2.9%にまで縮小しています。金融危機直後のそれと比べると、随分と縮小している印象です。仮に益回りと10年債が逆転すれば、リスクフリーの債券の方が株式よりも高リターンをもたらすということで、超異常域に突入してしまいます。

クレジット市場ではHigh Yieldと10年債のスプレッドがリーマンショック前レベルにまで縮小しています。(例えば10%のリターンが見込める商品があるとして、金余りで運用難の資金が殺到。結果として価格が上昇することでリターンが低下。逆に、危機時には資金が金融商品から逃避するため価格が下落し、リターンが高まるという具合です。)リーマン前には住宅関連デリバティブなどに資金が集中し、HYと10年債の利回り格差は2.5%にまで縮小していました。市場がリスクを取り、価格を押し上げ、価格上昇を通じて金融商品の潜在リターンが低下したことの表れです。逆に、2008年には資金が逃避し、価格が急落。結果として利回りは跳ね上がっています。


時計の針を現在に戻すと、スプレッド(HY利回りー10年債利回り)は3.7%という低水準で推移しています。金余りにより、市場がリターンを求めてハイリスク商品を買っていることがわかります。


イメージ 2
BTC推移


また、仮想通貨に市場のリスク選好・金余りの姿勢が端的に表れており、リターンを求めた投資家の資金流入が17年上旬まで続きました。FRBの利上げとバランスシート縮小、そしてBTC特有のリスクから、現在の価格は急落しています。行き場を失った資金が仮想通貨という時価総額の小さな市場に流入し、そして通貨リスクと金融引き締めを材料に、流入した資金が一気に抜けています。

07年は住宅関連で焦げ付きが見られ、現在は自動車ローンや学生ローンの焦げ付きが見られます。この2つは市場としてはそこまで大きくないため、大きな崩壊を起こすに至っていないのが実情です。



債券市場ではイールドカーブがフラット化し、景気の先行きの弱さを示唆しています。一般的にイールドカーブのフラット化は景気後退の先行シグナルであることが多く、ITバブル崩壊前も同様の現象がみられました。



何を見ても、現在の相場が危険域にあることは確かです。ですが、カタリストが無い限りは下がらないのが市場というもので、現在はきっかけ待ちといったところでしょうか。全てが逆に行くための必要条件は整っているため、あとは十分条件(カタリスト)が何なのかということが重要になります。自動車市場や学生ローンでは危険なイベントが発生しているものの、市場全体を揺るがす程ではないようです。

そうしたことを背景としてか、ダウはどんどん高値を取っています。「17年内はさすがに何も起こらないだろう、19年は先すぎる、なら18年内か?」そうした思惑からかもしれません。市場関係者やコメンテーターの話を聞くと、どうも18年天井がコンセンサスとなっているようです。

市場は常に上下に行き過ぎる生き物で、常に人を欺き、皆が踊り始めた時、ようやく宴は終わります。そうした特性を併せて考えると、目先の調整はあっても、いまの相場はコンセンサスと比べると案外長続きするのかもしれません。

不安定な危うい均衡状態の中で、残りわずかになった砂時計が時を刻んでいます。


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