中長期投資家の独り言

投資の技術的なこと、心構えなどを気の赴くままに。

カテゴリ: 市況

☆FOMCの読み方

今回のFOMCを受けて市場はさらに上げ足を速めています。

12月利上げ確率が70%にまで上昇したことが主な要因です。


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これを受けて為替市場ではドル高円安が進行、現在(21日08時)112円台で推移しています。

また、同時にドットチャートも発表されました。超長期の見通しがやや下方修正されています。


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金利については

合成金利=FF金利見通し+BS縮小インパクト と表現できます。

上の式から、合成金利に変化がないとすると、ドットチャートの下方修正はBS縮小を織り込んだものと言えるでしょう。BS縮小には40bps程度のインパクトがあるため、ほぼ、その分、チャートのドットが下方に移動したと読み取れます。逆に言えば、ドットチャートの下方修正分こそが、BS縮小を金利換算したインパクトを、”FOMCメンバーがどうとらえているか”を示していると分かります。

そう考えた場合、長期金利見通し全体として見た時、FF金利とBS縮小分の合成金利は変わらないため、長期金利にも大きな変化はないはずです。実際、10年債利回りは発表前の2.24%→2.27%(発表直後)へと僅かな上昇に留まっています。



☆今後

今回のドットチャートで、現在の利上げ局面における金利の上限が分かりました。今後についてはBS縮小のインパクトが実体経済に与える影響を見ていく必要がありそうです。こうしたイベントは過去に例がなかったため、実際の影響は不透明です。BS縮小の金利へのインパクトを読み間違っていた場合は、上にも下にも大きく振れる可能性が高そうです。

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これは17年7月に公開したものですが、本質的な部分に変化はないため再度掲載します。文中の指標は当時のものです。



アメリカが風邪をひくと、風邪はインフルエンザに化けて、またたく間に世界に感染してしまいます。従って、マクロ経済を見るときはアメリカ経済を中心に見ています。15年にはチャイナショックもありましたが結局のところ下げは限定的でした。市場は程よい均衡点を見つけ、15年末には2万円台を回復するに至りました。

そう考えると、やはり米国景気の動向が今後のグローバルな金融マーケットを占う上で重要だと思います。過去を振り返ってもITバブル崩壊、リーマンショックなど指数の下落幅が50%以上を超える”暴落”と呼んでいい下げは、ほぼ全てアメリカ発でした。

中国が米国のGDPを追い抜くまではアメリカファーストで市場を観察し、”米国発以外の危機は、基本的に買い”のスタイルでいいかと思っています。(中国の経済統計は参考にならないと言われますが、仮に下駄の履かせ方が一定であるならば、統計のトレンドを観察すると趨勢がつかめるかもしれません)

さて、米国についてさらに言うと、全ての指標が警戒域を示しているように思います。

現在の景気サイクルは120か月近い拡大フェーズの最中であり、過去最高期間を更新する勢いです。

株式市場に目を移すと、SP500のPERは18.9倍、益回りは5.2%。10年債の利回りが2.3%ですから、株式と債券を比較したときのスプレッドは2.9%にまで縮小しています。金融危機直後のそれと比べると、随分と縮小している印象です。仮に益回りと10年債が逆転すれば、リスクフリーの債券の方が株式よりも高リターンをもたらすということで、超異常域に突入してしまいます。

クレジット市場ではHigh Yieldと10年債のスプレッドがリーマンショック前レベルにまで縮小しています。(例えば10%のリターンが見込める商品があるとして、金余りで運用難の資金が殺到。結果として価格が上昇することでリターンが低下。逆に、危機時には資金が金融商品から逃避するため価格が下落し、リターンが高まるという具合です。)リーマン前には住宅関連デリバティブなどに資金が集中し、HYと10年債の利回り格差は2.5%にまで縮小していました。市場がリスクを取り、価格を押し上げ、価格上昇を通じて金融商品の潜在リターンが低下したことの表れです。逆に、2008年には資金が逃避し、価格が急落。結果として利回りは跳ね上がっています。


時計の針を現在に戻すと、スプレッド(HY利回りー10年債利回り)は3.7%という低水準で推移しています。金余りにより、市場がリターンを求めてハイリスク商品を買っていることがわかります。


イメージ 2
BTC推移


また、仮想通貨に市場のリスク選好・金余りの姿勢が端的に表れており、リターンを求めた投資家の資金流入が17年上旬まで続きました。FRBの利上げとバランスシート縮小、そしてBTC特有のリスクから、現在の価格は急落しています。行き場を失った資金が仮想通貨という時価総額の小さな市場に流入し、そして通貨リスクと金融引き締めを材料に、流入した資金が一気に抜けています。

07年は住宅関連で焦げ付きが見られ、現在は自動車ローンや学生ローンの焦げ付きが見られます。この2つは市場としてはそこまで大きくないため、大きな崩壊を起こすに至っていないのが実情です。



債券市場ではイールドカーブがフラット化し、景気の先行きの弱さを示唆しています。一般的にイールドカーブのフラット化は景気後退の先行シグナルであることが多く、ITバブル崩壊前も同様の現象がみられました。



何を見ても、現在の相場が危険域にあることは確かです。ですが、カタリストが無い限りは下がらないのが市場というもので、現在はきっかけ待ちといったところでしょうか。全てが逆に行くための必要条件は整っているため、あとは十分条件(カタリスト)が何なのかということが重要になります。自動車市場や学生ローンでは危険なイベントが発生しているものの、市場全体を揺るがす程ではないようです。

そうしたことを背景としてか、ダウはどんどん高値を取っています。「17年内はさすがに何も起こらないだろう、19年は先すぎる、なら18年内か?」そうした思惑からかもしれません。市場関係者やコメンテーターの話を聞くと、どうも18年天井がコンセンサスとなっているようです。

市場は常に上下に行き過ぎる生き物で、常に人を欺き、皆が踊り始めた時、ようやく宴は終わります。そうした特性を併せて考えると、目先の調整はあっても、いまの相場はコンセンサスと比べると案外長続きするのかもしれません。

不安定な危うい均衡状態の中で、残りわずかになった砂時計が時を刻んでいます。


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☆発表された日本での課税


先日、仮想通貨課税の具体的な内容が国税HPに記載されました。そして、その方向性は日米で真逆を向いているように思われました。まず、先日発表された日本の課税についてです。

仮想通貨取引は「雑所得」【仮想通貨まとめ】


内容としては売買差益に雑所得という一般的なものでした。FXもかつては「雑所得で総合課税」でしたが、現在では「先物取引に係る雑所得等」となっています。つまり、先物取引等と損益が通算でき、さらに損失の繰越も可能となっています。

仮想通貨の現行の課税方式は、投資家にとっては極めて分の悪いものと言えそうです。ですが、法整備が進み裾野が広がるにつれて、「先物取引に係る雑所得等」として扱われるのではないかと思っています。


☆仮想通貨でモノを買う場合

それに加えて、仮想通貨でモノを購入した場合の課税についても明記されています。例えば1BTCを1万円で買い、購入した1BTCを利用して6万円のテレビを購入した場合を考えます。このケースでは1BTCの差益である6-1=5万円が雑所得として課税対象となります。

そして、その数日後、米国では以下の法案が下院に提出されました。

米下院に新法案、600ドル未満のビットコイン消費は非課税 【bitcoin news】


かつては仮想通貨によるモノの売買にも課税されていた米国。先の例でいうと、テレビを購入した場合の差益5万円分に課税されていましたが、それを今後非課税にするという案です。日米で真逆の課税方針となっています。


☆米国の目指すところ

米国の新法案の目的は「課税が日常生活での仮想通貨普及の妨げにならないようにする」所にあります。日米の課税の違いに、米国官民一体となってのデファクトスタンダ―ダー志向が見え隠れしました。

デファクトスタンダードとは、使われれば使われるほど価値の上がるサービスで覇権を取った者を表現した言葉です。GoogleやFacebookはデファクトスタンダ―ダーの最たる例です。例えばFacebookは、皆が使っているから自分も使い、それを見た他人も同じサービスを使うという過程(正の外部効果という経済原理)を経て、デファクトスタンダードを獲得しました。一方で日本のmixiは正の外部効果にモノを言わせた黒船に駆逐されるに至りました。

米国企業を見てみると世界の覇権を握り、そしてデファクトスタンダーダーとして振る舞うことで周囲のエコシステムも上手く取り組み、自国経済の活性につなげています。仮想通貨のアイディアも恐らくは日本発ではありますが、完全に米国に主導権を握られたと言えそうです。

中国は資本流出への懸念から「ICOの中止や取引所の閉鎖を発表した」と伝えられています。ですが、こうした施策は、長期的に見れば世界の潮流に逆行するものであり、賢明であるとは思えません。一方の米国では規制をかけつつもICOをうまく使いこなし、仮想通貨という巨大市場の覇権を握ろうとしているように見えるのです。

全く異なる課税方式がほぼ同時に発表されたため、思うところがあり記事としました。


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